お知らせ
- 長期優先債務の定義の改定について
- 2004.10.06
- 長期優先債務の定義の改定について
2004年10月6日
JCRでは従来、信用力評価のひとつとして債券などの個別債務に対する格付けに加えて、企業等の包括的な債務返済能力を示す概念である「長期優先債務格付け」を導入し、運用面では、長期優先債務格付けを格付け評価の上限として、企業等が実際に債券等を発行する場合に「財務上の特約」などによる回収面での劣後性を個別債務の格付けに反映させることを原則としてきた。
しかし最近は、下記に述べるような動きを背景に、債務間の優先劣後関係が格付け判断に影響するケースが増加している。即ち、
(i) 金融機関、企業再生ファンドや産業再生機構による企業再生活動の本格化とともに、債権放棄、債務の株式化、債務の交換といった手法が多用されてきている。
(ii) 司法手続き面で、民事再生手続きに代表されるように、破綻処理の迅速化が進められ、その結果、破綻後の回収可能性の向上、債務間での回収率の差異がみられるようになっている。
(iii) 企業の資金調達面で、財務特約(コベナンツ)を活用する動きが広がっており、債権の回収可能性を判断する上で、財務特約の重要性が増してきている。
JCRでは、今般、上記の動きを踏まえて長期優先債務の位置づけを見直した結果、長期優先債務格付けは企業等の包括的な債務返済能力を示す概念であることを確認するとともに、ケースにより個別債務(債券、CP、ローン等)の格付けが長期優先債務格付けを下回ることばかりではなく、上回ることもありうることを明確にすることとした。なお、個別債務の格付けが長期優先債務格付けとは異なる評価になる場合については、長期優先債務格付けも個別債務の格付けと併せて公表していくこととする。
≪今回の見直しによる新しい定義≫
長期優先債務格付けとは、債務者(発行体)の債務全体を包括的に捉え、その債務履行能力を評価したものです。このうち、期限1年以内の債務に対する債務履行能力を評価したものを短期優先債務格付けと位置づけています。個別債務の評価(債券の格付け、ローンの格付け等)では、債務の契約内容、債務間の優先劣後関係、回収可能性の程度も考慮するため、個別債務の格付けが長期優先債務格付けと異なること(上回ること、または下回ること)もあります。
イメージ図(バランスシートの負債、資本の部)
長期優先債務格付けの概念
個別債務に対する格付け(社債、CP等)
※ご参考(従来の定義)
「長期優先債務とは債務の弁済順位において他の一般債務よりも劣後しない長期の期限付き債務をさします。個々の債券の格付けについては、劣後性、担保、保証の状況や財務特約条項の内容等によっては長期優先債務格付けと差が生じることもあります。」
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