お知らせ

中小企業信用リスク推定モデルの開発について
2002.06.21
中小企業信用リスク推定モデルの開発について

2002年6月21日

株式会社日本格付研究所(以下JCR)は、この度新たに「中小企業信用リスク推定モデル」を開発しましたので、以下の通りお知らせします。

(半正定値ロジット・モデルの開発)

●中小企業の信用リスクを推定するために精度の高い計量モデルを開発することは、金融機関等による中小企業への与信を円滑化し、ひいては我が国産業の活性化にも資する重要な課題です。既にこのために政府、民間いずれにおいても様々な試みが活発に実行されてきました。こうした中で、JCRは、数理計画法、金融工学の分野の権威である中央大学今野浩教授(前東京工業大学大学院社会理工学研究科教授)の指導のもと、1年半の期間をかけて中小企業を対象とした画期的な信用リスク推定モデルの開発に成功しました。

この「中小企業信用リスク推定モデル」(今後“JCREST”と呼びます。)は、最新の最適化計算アルゴリズムを用いて大量の企業財務データを処理することにより開発されたもので、「半正定値ロジット・モデル(positive semi-definite logit model)」と呼ばれるものです。このモデルは、従来の一般化線形モデルが財務指標の一次式(超平面)で表現されるのに比して、限定された形の二次式(超曲面)で表現されることから財務指標の持つ信用リスク情報をより肌理細かく抽出することが可能となるなどの優位性を有しています(下図参照。なお、 JCR「格付け」2002年6月号に関連の特集記事が掲載されています。)。

(*図1「一般化線形モデルによる倒産性向変数(z値)の等高面の例」)



(*図2「半正定値モデルによる倒産性向変数(z値)の等高面の例」)

(注)上記の図は説明変数が3個(財務指標:X1、X2、X3)の場合を示します。

このように倒産・非倒産の信用リスク情報を肌目細かく判別する結果、本モデルによる倒産企業と非倒産企業の判定率も、これまでの推定モデルより格段に高い水準を得ることが可能となりました。

(モデル開発の入力データ)

●この「中小企業信用リスク推定モデル(JCREST)」を開発するにあたっては、株式会社東京商工リサーチ提供の大規模財務データベース(1万数千社、約9万期分の財務データで構成)を利用し、具体的入力データとしては使い勝手の良さに配慮して中小企業の財務データとして入手し易いB/S項目約 50、P/L項目約30を選択しています。本推定モデルは、「建設業」、「製造業」、「卸売・小売業・飲食店」の3業種に属する企業を対象にした3種のモデルから構成されており、更に各業種に属する個別企業毎に入力データに対して、「1年以内に倒産する確率」、「2年以内に倒産する確率」、「3年以内に倒産する確率」の3つの数値を計算します。

(JCRの方針)

●JCRでは、既に1998年に上場企業の一般事業会社に関する「個別企業デフォルト率推定モデル」を開発して以来、企業に対する実際の格付け作業に計量モデルを利用するとともに、財務指標と信用リスクの関係についても統計的研究を重ねノウハウの蓄積に努めてきました。本件「中小企業信用リスク推定モデル(JCREST)」の開発を契機として、これまでの格付け事業に加えて、新たに中小企業を中心とした信用リスク推定モデルの開発販売関連事業にも参入していく方針です。

(JCRセミナー)

●本件「中小企業信用リスク推定モデル(JCREST)」に関しては、来る7月9日(火)午後3時30分より東京・大手町の経団連会館で開催されるJCRセミナーにおいて詳細な説明を行う予定です。

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