お知らせ
- カントリーシーリングに関する格付方法の変更を検討
- 2014.09.26
- 株式会社日本格付研究所(JCR)では、以下のとおり格付方法の変更を検討していますので、その概要と背景および当該変更に伴い見直される可能性のある格付の範囲と見直しに要する期間をお知らせします。
1. 検討中の変更の概要と背景
JCRでは、2013年3月29日付の「ソブリン・準ソブリンの信用格付方法」および2012年8月28日付の「コーポレート等の信用格付方法」(「現行手法」)の一部変更を検討している。変更内容は、カントリーシーリングに関するもので、現行では、その国に所在する企業などの格付の上限として、ソブリンの外貨建格付を一律にカントリーシーリングとしているが、今般、新たに企業などに対する政府の外貨取引制限の蓋然性を評価した上で、カントリーシーリングを設定するものである。
現行の格付手法では、ソブリン格付をカントリーシーリングとして企業などの格付の上限としている。これは過去の政府の債務危機などに見られたように、政府が外貨の資金繰りに窮した場合、所在する企業などに対して外貨の取引制限を行い、必要な外貨を確保するなどの対応がみられた。こうしたことから、政府の影響力を強く反映してきた。
しかし、近年の危機に直面した政府の対応状況をみると、一部の政府では依然として所在する企業などに対して外貨取引制限を課す事例があるものの、全体としては制限を課すことが限定的となってきている。この背景には、国際的な金融取引が拡大する中、資本規制強化による弊害よりも自由化による利益の方がはるかに大きいといった認識から、各国政府とも変動相場制の移行や資本規制の自由化を進めていることなどがある。また、通貨スワップ協定などを多国間で締結し危機を回避する手段も講じられている。こうしたことから、政府の外貨取引制限の蓋然性を評価することで実勢に合致した格付が可能になると考えている。
これらの点を踏まえ、JCRではカントリーシーリングについて、次のように取り扱うことを検討している。
カントリーシーリングについて検討中の新たな取扱い
(1) ソブリン・準ソブリンの信用格付方法
カントリーシーリングはある国に所在する企業などが債務の返済のために行う自国通貨から外貨への交換や外貨の国外送金などの外貨取引に対して、政府が制限を加える蓋然性の評価である。カントリーシーリングは、企業などの外貨建格付の上限を示すものであり、ソブリンの外貨建格付を上回る場合が多い。
外貨建格付を対象としているのは、通常、外貨は自国通貨と比べて政府自らの権限による調達や発行が難しく、政府が外貨建債務の返済の資金繰りなどに支障を来した場合、企業などの外貨取引に対して制限を課すことがあるためである。
カントリーシーリングの設定は、採用通貨、通貨制度、貿易決済及び資本取引規制、経済政策、対外債務、これまでの政府の対応状況などを総合的に評価して決定する。通常、ソブリンの外貨建格付から0~3ノッチ程度上回るが、米国、ユーロ圏、日本など主要通貨を採用している国は制限を加える蓋然性が極めて小さいことから前述のノッチ幅の制約を受けない場合もある。
例外的ではあるが、国際開発金融機関など当局間における重要な取り決めがある、国外に所在する親会社などから強い支援がある場合などは所在国のカントリーシーリングを超えることがある。
(2) コーポレート等の信用格付方法
企業の格付は、当該企業所在国のソブリン格付の制約を受けるが、例外的にこれを超える検討が可能となる。①国外に所在する親会社などから強い支援がある場合②国外において強く安定した収益基盤を有している、国際金融市場からの高い資金調達能力がある、さらには財務の健全性などを兼ね備えている場合などが例外的に認められる。ただし、②の場合には政府の外貨取引制限の蓋然性を評価したカントリーシーリングが格付の上限となる。
2. 変更に伴い見直される可能性のある格付の範囲と見直しに要する期間
本件検討は、本年11月中旬までに完了させる予定である。前述した格付方法の変更が実際に行われた場合、その結果として見直しが行われる可能性がある格付は、下に掲げる格付である。当該変更は格付にポジティブに働く可能性が高いと考えている。本件検討の完了と同時に、その結果を格付に反映させる予定である。
発行体:AEON Thana Sinsap (Thailand) Public Company Limited
外貨建長期発行体格付:A-
見通し:ネガティブ
(担当)内藤 寿彦・田村 喜彦
14d0510
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