2. オープン・エンド型投資法人の格付を付与するにあたって留意すべき点
① 投資主からの請求に基づく投資口の払戻し
前述のように、オープン・エンド型投資法人は投資主からの請求により投資口の払戻しが行われる仕組みであることから、借入金による払戻し資金の調達によってLTVの上昇を余儀なくされるリスクについても想定しておく必要がある。
J-REITと異なり、投資口の基準価格は不動産評価額をベースに算定されることからボラティリティは低いと考えられるものの、不動産市況の急速な下落等のイベントが発生し、基準価格の算定根拠となる不動産評価額等が大幅に下落する局面においては、本来長期保有を目的としていた投資家を対象としているといえども、想定以上の払戻し請求が行われる可能性も考えられる。従って、LTVの急激な上昇リスクを一定程度抑制するために、一定期間内における払戻し金額の上限を設定するなどの手当てが必要となろう。
また、投資主からの払戻し請求から実際に払戻しが実行されるまでの期間、比較的短期間での売却が可能な流動性が高い物件を確保しているか、こうした資産サイドの流動性確保に関する資産運用会社の取組状況や、スポンサーとの協業の実績や将来の実現可能性等をも踏まえて留意する必要がある。
② 不動産評価額の推移
前述のように、不動産市況の変調によって、不動産評価額が急速に下落することにより、投資家の払戻し請求が急増する可能性が高まり、また同時に時価ベースのLTVについても上昇するリスクがある。こうした点を考慮に入れると、通常のJ-REITでも同様ではあるものの、ポートフォリオの分散が効いていることがより望ましいものと考えられ、物件単位のみならず、立地、テナントや用途といった物件属性についても、分散効果によるキャッシュフローの安定性を享受可能かどうかなど、ポートフォリオとしての安定度をより注視する必要があるものと考えられる。